二十年間飲んでいた酒を止めて一年が経ちました。妻は良く「そんなに飲むと、体を壊して大好きなお酒が飲めなくなるよ。」と言っていましたが、飲んでいる時はまさか自分が飲めなくなるとは夢にも思いませんでした。
昨年、飲酒による不祥事で懲戒処分を受け、職場が勧めるアルコール専門治療が始まりました。自助グループにも足を運びますが、ただただ職場復帰の為にと意地だけで参加していましたので、人の話は全く耳に入らず他人との違い探しばかりしていました。今、振り返ると当初の記憶がなく無駄なエネルギーを注いでいたと思います。
「酒なんて簡単に止められる。職場復帰さえ果たせたら、断酒会なんて必要ない。」腹の底でそんな事を思っていましたので、そんな状態では仕事に戻れるはずもなく、自暴自棄になり三月中ばに自殺を図り入院生活を送りました。入院中に再び断酒会に自ら足を運ぶ中で、偶然にも妻の命日が同じ日だという大先輩に出会い叱咤激励を受け、私にとって大きな転機となりました。少しずつですが他人の話に耳を傾けられる様になり、共感と呼べるようなものを覚える事が出来ました。それまでは自分自身の考え方に愕然としましたが、過去ばかりに囚われて足踏み状態を続けていた事に気付くことが出来、長いトンネルからようやく抜け出せたような気がしました。
去年、専門治療が始まる前にある医師にこう言われました。「選ばれた人になって下さい。」と。この言葉を理解出来るまでには時間が掛かりましたが、自分でもそうなりたいと望むようにもなりました。死ぬまで断酒という長い道のりですが、家族の為、他界した妻の為にも酒と縁を切る人生を歩む事が、何よりの自分自身の為だと信じて諸先輩方を良きお手本とし、断酒会の輪から離れないよう頑張っていきますので、宜しくお願いいたします。


酒を飲みはじめの頃、友人数人と近くのスナックに行く途中、交差点の反対側に、べ口べ口に酔っ払った中年のサラリーマンが、千鳥足でフラフラして挙句の果てに座り込んでいた。その時は、まだ数時間後に起こる事を何も分からなかった。