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全日本断酒連盟
体験談
高橋 一夫

選ばれた人

 私の酒は仕事上で行き詰まり、上司に治療を勧められます。当時、アルコール治療など容易に受け入れられるものではありません。家内が他界して二年が過ぎる頃でした。

治療や仕事から逃れたい為、酒を飲み続けたい一心で大学病院の精神科を受診します。思惑通り某大学病院に入院しますが、我慢出来ずに一週間後に院内飲酒をする有様。一週間我慢した酒ですから大層美味かろうと思って口にした酒が思いの外不味かった事を記憶しています。大学病院から某クリニック(アルコール専門デイケア)への紹介状を預かり強制退院となります。

 

 行き場を失い仕事に戻る意欲も消え失せ、仕事を休む口実の「診断書」が欲しくて遮二無二に病院を探しました。近くの心療内科に目が留まり受診しますが、診察して下さった非常勤の先生にこんな言葉を掛けてもらうのです。

「アルコール依存症者がお酒を止め続けることは容易じゃないんだよ。お酒を止め続けていく人は選ばれた人なんだよ!」と。当時の私には医師の言葉の本当の意味を理解することは出来ませんでしたが、少なからず心に響くものがありました。

病気休職する為の「診断書」も諦めざるを得ない状況となり、仕方なく上司の勧めるアルコール専門デイケアに通い始めます。

 

 「酒さえ口にしなければ良いのだろう!」そんな傲慢な気持ちで通院、自助グループへの参加を繰り返していますから、なかなか復職への道筋が見えてきません。焦りばかり募り、八方塞がりの時、一人の断酒会の大先輩にお会いします。私に訪れた"転記"でした。

「謙虚」、「気付き」、「ただ断酒をすれば良いのではない」。大先輩の口から病院のスタッフと同じ言葉が聞かれ困惑しました。私の心の呪縛が解き放たれる瞬間でもありました。

私は二年もの長い休職期間を経て復職を果たします。正直長かったですが、私にとって必要な時間だったと感謝の念に変わってきました。院内飲酒で強制退院を受けた某大学から預かった「紹介状」ですが、職場の勧める別のクリニックに通院した為、手元に残ったままでしたが、数年前開封したところ「アルコール依存症・非社会性人格障害」とそこには書かれていました。娘にはこの紹介状の話をして一緒に笑いましたが、当時の私の状態を象徴するエピソードです。

 

 この会では「アルコール依存症になって良かった」と、そんな言葉がしばしば聞かれます。私はそこまでの境地ではありませんが、もっともっと早く病気に気付きたかったと切に思う時があります。かけがえのないものを失って私は気付きました。家内が生きている内に病気に気付きたかった。

「過去は変えられないけど、未来には希望をもって」。断酒会にお世話になって感銘を受けた言葉です。アルコール依存症になって良かったとは思えなくとも、私は「選ばれた人間」になりたいと思い続けます。